2022年10月6日木曜日

Audi Sport, quattro GmbH and Audi Sport GmbH

 WRC用のレース部門だったAudiSportと今のAudi Sport GmbHは違うというのがミソです。
1981年から1987年のWRCで使われていたロゴ

Audi Sport Rally Teamといえば…というロゴですね。
ボディに入っている黄色いラインはHBというタバコメーカーのカラーのようです。
WRCでは勝てなくなり
DTMでクランク再鍛造詭弁が通らずキレて
(詭弁の上手さはどこぞのカリクレス級です。)
アメリカに主戦場を移動し
IMSAに出て
スーパーツーリングカーを作って各国のツーリングカーレースを転戦しました。
4WD禁止令にキレて(FFでは勝てず)
ルマンで更なる詭弁を語ってギアボックスのアッセンブリー交換をして怒られて
ポルシェと同族で食い合うという天才だかアホだかわからんことをやっていました。
その合間にDTMにも戻っていたりもしていました。
DTMではBMWエンジンを積んだTTを走らせて勝っちゃったりしてますが、これはABTがやっていて、AudiSportsでは無いというのがちょっとしたミソです。



一方、クワトロゲーエムベーハーは1983年に
ネッカーズウルム(前進となるNSU Motorenwerke AGの工場跡地)に誕生しています。
*NSUは2輪車から小型車を主に製造していたブランドで、ヴァンケル(ロータリー)エンジンとPrinz TT,TTSなどが有名です。
*アウディの本拠地インゴルシュタットはアウトユニオンの本拠地をそのまま使っています。

で、非常に謎なのですが、次にこの名前が出てくるのは1994年に飛びます。それまでもハイパフォーマンスモデルの製造に関わっていたようなのですが、S2(1990or1991~1995)でチラッと出てくるだけであり、RS2はAudi AGとPorsche AGのコラボかつPorsche Zuffenhausen工場で生産されているので、実は関わりが無いというのが公式見解のようです。

1973年にアウディとポルシェはAudi 100 Coupé S(1969~1976)にV8を積み、928のテストを行っていたようです。この車はポルシェが今も隠し持っているという話で、過去には写真を撮ってオンラインに掲載した人が居たようです。ベースとなった100CoupeはFFなので、完全にガワだけ使った感じなのでしょう。とりあえず100CoupeSが初のSモデルであり、実はS2が初のSxモデルではあるものの初めてSバッジがついたモデルでは無いという非常にオタク臭いニチャニチャトークをここに残しておきます。ちなみにアウディブランドでは無いですがNSU TTS(67C;1967~1971)は1967年にはあったため、こちらを源流としても良いのかもしれません。

つまり、
Ur-quattro系5v5気筒エンジンを転用した以下の3車種と
100 S4に4.2L V8を積んだS4 4.2S6 "Ur-S6"(C4;1995~1997)はS/RSモデルの元祖ではあるものの、製造業者がAudi AG.になっているという認識で大丈夫だと思います。

quattro GmbH.が本格的に開発に携わったのはS6 plus(C4;1996~1997)が初ということになります。それまでも関係はしていたはずですが、根本的に方向性を決めて、ベース車の状態から1からスポーツモデルを作っていくという作業を行ったのはS6plusが最初ということですね。
その後、S6 plusの4.2L V8を40v化してS8(D2;1996~2002)に積み、S6(C5;1999~2002)にも積みます。このエンジンはコスワース(現在のMAHLE)によって強化かつターボ化され、RS6(C5;2002~2004)となります。Audi V8から受け継がれた32v V8エンジンは40v+ターボになって一旦終了です。


話を元に戻し、S6 plus販売後、S4(B5;1997~2002)が発売されます。このエンジンは2.7L 30v V6エンジンであり、2.4 30v V6の発展形だと思われます。A6用のエンジンをちょっと弄って載せたイメージで大丈夫だと思います。この2671ccの30v V6エンジンをコスワースにターボ化させたものがRS4(B5;1997~2001)に搭載されます。
現行のRS4,5に搭載されているV6エンジンとは全く関連性が無いエンジンになっていることも重要なポイントです。

また、S6 plusやS4(B5)が出た頃にS3(8L;1999~2003)も発売されます。これは1.8Lの20v 直列4気筒エンジンをカリカリに弄ったものであり、S3では225馬力、TT quattro sport(8N;2005~2006)では240馬力までパワーアップされています。このエンジンは僕が以前乗っていた9NポロGTIのエンジンそのものなので、元々Golf4GTIで使われていた150馬力そこそこのエンジンが240馬力までパワーアップされたというのも中々のものだと思います。
後述する価値も無いのでここに書いておきますが、S3(8P;2006~2013)TTS(8J;2008~2014)Golf 6R(2008~2013)がそのまま使われているだけで、SモデルがAudi Sport製では無くなった事を端的に表しているのかもしれません。ちなみにこの流れの中にS1(8X;2014~2018)も存在しています。
S3(8V;2013~2020)TTS(8S;2014~2023)Golf 7R(2013~2020)ベースで同じ事をやっています。

途中、Audi A4 DTM Edition(B7;2005)というエンジン以外を弄ったモデルも出したは出したのですが、基本的にはAudi伝統?の5バルブエンジンをカリカリに弄って載せてきたのがquattro GmbH.第一期だと考えて良いと思われます。第二期は新設計直噴エンジン+流用というイメージでしょうか。

この5バルブエンジン=quattro GmbH.というのは2004年のRS6,RS6  plus(C5;2002~2004)S4(B6,7;2003~2005,2005~2008)S5(B8;2007~2012)で一区切りつき、2006年に発表されるRS4(B7;2006~2008)で大きくリニューアルされることとなります。このエンジンはボアストロークが一緒なだけで、ブロックの設計からバルブ数(各気筒4バルブで32v)までほぼ新造されたようです。直噴化されているので当然ですね。このRS4のエンジンはドライサンプ化されてR8 4.2に搭載され、その後スモールボア化されウェットサンプの5.2L V10へと気筒数を増やし、S6(C6;2006~2011)S8(D3;2002~2009)に搭載された後、ドライサンプ化されてR8 V10とガヤルド後期に搭載されています。途中分岐したガヤルド前期とRS6の5.0L V10はこの5.2Lエンジンの高回転型という位置づけにあったものの、5.0は等爆エンジンであり、5.2は不等爆エンジンであるため、この辺りのエンジンを同一系の発展型と見るのか、兄弟エンジンと見るのかは非常に難しいところです。この時のRS6(C6;2008~2010)はかなりトチ狂っており、ドライサンプの等爆エンジンをツインターボ化してエンジンベイに押し込んであります。R8を除けば、アウディのRSモデル唯一のドライサンプエンジン搭載車です。歴代RSモデルを乗って(売って)きた営業の方に言わせると、C6RS6が間違いなくベストなRSモデルだそうです。ただ、生産年数が少なく台数もかなり少ない+わかって購入している人が多い為、中古購入は勧められないという話を聞いています。
捏ねくり回しは酷く、正直綺麗にその経緯を追うことは出来無さそうです。(Quattro GmbHのトップであるStephan ReilがR8やガヤルドで使われたV10エンジンから2気筒削除したようなものだと言っていますが、V8に2気筒足してV10を作り、そのV10を捏ねくり回していたというのが現実です。)

この辺りをピークとし、クワトロゲーエムベーハーは2010年代には少々賢くなってきてしまいます。賢くなったので2016年にAudi Sport GmbHと名称まで変更してしまいます。
2010年代には本当に賢くなってしまい、5バルブエンジンを完全に廃止し、S4(B8;2009~2016),S5(B8.5;2013~2017),SQ5(8.5R;2013~2017)にはV6スーパーチャージャーを搭載します。先代からキャリーオーバーされた4.2LエンジンよりもQ7から引っ張ってきたV6スーパーチャージャーエンジンはキャパがあった為、この頃RS4/5不要論が盛んに叫ばれていました。またここでは触れませんが、この頃からSモデルはディーゼルモデルも登場しています。
ライトチューンとフルチューンくらいの温度差があったSモデルとRSモデルですが、低速域でのトルクを重視したSモデルと高回転まで伸びやかに回るRSモデルという差別化が加速したように感じます。
RS4(B8;2012~2015)RS5(8T;2010~2015)でS-tronic化(PDK,DSGと同じデュアルクラッチのAT)されており、先代B7 RS4はMTしか設定が無かったことを考えるとかなり一般化(台数を売りたいというのがよく見える)されてきたように思います。

RS6(C7;2013~2018)RS7(4G8;2013~2019)S8(D4;2012~2018)はC6系のトチ狂い方とは一転、ダウンサイジングというゴミみたいな非常に知的なV8エンジンを搭載するようになりました。S6(C7;2012~2018)S7(4G8;2012~2017)の発展型を積むという流れは過去の流れを踏襲していますが、この頃お隣のポルシェ村でパナメーラターボというダサすぎて見るだけで国民が死に至る化け物セダンが登場したため、急に洗練されたV8エンジンが登場するようになりました。ツインスクロールターボツインターボ+トルコンATとツインターボ+S-tronicと差別化は出来ていますし、噂によればポルシェ設計のエンジンということですし、ベントレーやランボルギーニ ウルスでも使われているわけなので、アウディはお買い得ですね。現行のC8 RS6はこのエンジンに気筒休止システムを組み込んだ更なる発展型ということです。
このV8エンジンはRS4、RS5が積んだV6とホットVレイアウトを共有どころか、捏ねくり回して創っています。このV6ってどうなの?という話は僕が既に書いている記事があるのでそちらを読んでもらうことにしましょう。正直、ポルシェと同じエンジンを積むようになって興味を失いつつある…というのは内緒です。RS4、RS5、RS6、RSQ8を全開にする機会がありましたが、個人的にはS5カブリオレのシングルターボミラーサイクルのほうが味があって面白いと思います。速いのは間違いなくRS6なのですが、あまりに綺麗にエンジンが下から上まで回るので、”味”というものは希薄になっています。


で、ここで満を持してTTRS(8J;2009~2014)TTRS(8N;2014~2023)が積んできた直列5気筒エンジンに話を戻しましょう。カリカリ直列4気筒より明確なキャラクターのある5気筒のほうが楽しくない???という取材がある通り、かなり自由のあった2000年代にノリと勢いで5気筒エンジンを開発したようです。正確には完全な新規設計ではないのですが、前述したガヤルド前期型の5.0Lエンジンと北米VWで設定されていた直列5気筒エンジンを組み合わせてUr-quattroの5気筒エンジンと似たフィーリングになるように創ったという、経緯と流用の嵐を見ているとやっぱりトチ狂ってたんやな…というコメントしか出ないエンジンです。これは賢くなってしまった今のAudi Sport GmbHでは作れ無さそうです。
元TopGear、現GrandTourのプレゼンターであるJeremyClarksonは3 best enginesにレクサスV10(LF-A)、アルファロメオV6(ブッソ)、アウディV8 4.2L(RS4)を挙げています。ただ、このアウディV8はラリー直系のエンジンでは無いことも認めており、同回(シーズン5;1)で現行のアウディで純粋なアウディエンジンというのはTTRSの5気筒エンジンとR8のV10エンジンしか無いというのも名言しています。ハハハ
ジェレミーは割とTTRSが気に入っているようで、別回(シーズン2;4)でもそこそこ気に入っていると批評しています。
話を元に戻しましょう。その後、MQBプラットフォームを共有するセアトのCupra Formentor VZ5KTM X-BOWに転用するという細やかな流用しか出来なかったにも関わらず、RS3、RSQ3というドル箱RSモデルにも使うという理由で稟議を通した空気が漂っています。(更にオタク臭いことを言うと、ドンカーブートにも直列5気筒を積んだモデルがあったり、キットカーを探すと何車種か5気筒エンジンが載っているものがあるようです。)
EA855とEA855 evoについてはアウディの広報資料が手元にフルラインナップであるので後日詳細をまとめますが、エンジンブロックがバーミキュラ鋳鉄からアルミに変わっていたり、内部構造が大きく変わっていたり、ボアストロークを共有する同系統のエンジンではあるものの、ほぼ新造されているのが実情です。排ガス規制を通す為にevoという立ち位置にしたのかな?という空気を感じます。
RS3、RSQ3は存続するようですが、TTRSは2023年に生産中止となります。この先この5気筒エンジンはどうなっていくのでしょうか。個人的にはこの5気筒エンジンをファインチューンした上でハイブリッドシステムを組み合わせてRS4に載せれば良いのに…と思うのですが、中々そうはいかないのでしょうね…。


カスタマーレーシングとかアウディエクスクルーシブの話は公式サイトにぶんなげましょう。

参考
https://www.audi-mediacenter.com/en/audi-sport-gmbh-formerly-quattro-gmbh-2946

0 件のコメント:

コメントを投稿