2025年10月6日月曜日

他社製ECUチューニングデータの上書き&ECUチューニングについて語る際に知っておいて欲しいコト(その4)

 チューニングのステージを上げたい場合、他社のデータが入っていると要注意だねという話&自社のデータは書き換えられないとされていても、適切なプロセスを経ることで絶対に書き換えが可能というその1

ツールメーカーが作る吊るしデータは存在する&チューナーによって意外とデータは違う&チューニングカーを壊すのはオーナー自身というその2

ツール毎のアプローチ方法の違いが施工時間&施工可能メニューに影響を与えているんだよ。速いツールは出来る事も少ないけど、それを逆手に取ることも出来るよ。というその3

から続く、その4”チューニング業界のリアルな闇は本当に闇なの?”です。

”書き換えたのに、書き換えてなかった。”はどのようにして起きるのか、これまでの内容を元に考えていきましょう。


ポイントはFullReadとVRです。

既に触れてきている通り、データの吸い出しは①ECU内のデータを大真面目に引き抜いてくるもの②サーバーから該当データをDLしてくるものの2パターンがあります。最近の車はOBD経由でアプローチすると②サーバーから該当データをDLしてくるものが多く、実際のデータを抜き出してくるわけでは無い。というのがポイントです。

つまり、今、その眼の前にある車のデータの中身は実際に吸い出したデータなのか、該当データをダウンロードしてきているのか…というところがわかっている/わかっていないというのが大問題です。

実はこの視点で幾つものECU書き換えサービスの解説をしている動画を見ると、物凄く有名なショップでもバーチャルリードを理解しておらず、その車の中のデータを抜き出していると思っている例が数多く見受けられます。

①VRなのか、直接の吸い出しなのか
②扱っているデータ領域はEEPROM領域を含むFullReadなのか、PartialReadなのか
③PartialReadであれば、その領域は燃焼制御領域だけなのか、スピードリミッターなどの定義領域も含むのか

youtubeを幾つか見るだけでも、この辺りが根本的にわかっていない例が沢山あります。流石にVRだけは…と思うのですが、多くのツールが英語表記のまま操作が必要です。"read"は中1レベルだと思いますが、"virtual"は令和7年に中1,2の語彙リストから中3の語彙リストに移動しましたしね。ええ。

というか、調べていて気がついたのですが、バーチャルという単語が国語の教科書に登場するのは中3〜高1あたりのようで、みんながスルーする評論文に出てくるわけですね。そこでも”仮想”という意味がプッシュされており、”疑似”という意味はスルーされることが多い印象があります。受験で出てくる語彙だけ抑えるのは高得点には繋がるかもしれませんが、生きた国語力に直結しないというのは大人にならないとわからないですよね…非常に難しいところです。(元予備校講師の僕による謎解説)

大幅に脱線しましたが、こういった情報を知ってないのはおかしい!というのも実は酷な話です。

実際にデータ編集をする人はある種経験則として理解していますが、データの読み出し/書き込みを行っている人間に向けた情報はツールメーカーから全く公開されていないのが現実です。僕のように、元々多少ECUのことがわかっており、点在している情報を繋ぐのが趣味である人間はレアケースでしょう…。数多く施工させて頂く中で、割と重要な内容を顧客に伝えていない例が多々見受けられ、”告知義務”って知ってる???という顔になったのは内緒です。(僕が大学で延々と学んだ領域では、インフォームドコンセントの名前で、常に”告知義務”の話をしていました。こういったスキルを身につけている事をチェックする問題が必ずOSCE(Objective Structured Clinical Examination)という客観的臨床能力試験に出題されていましたね。学内で受ける国家試験として徹底的に訓練&習得させられる必須スキルです。)


この”自分達が扱っているデータはどういうデータなのか”というのはVRの闇とも言えるでしょうか。ツールによっても、特定の車種に対してVRするツールとバカ正直にデータを読みに行くツールがあります。弊社が使っているAUTOTUNERはスピード重視な為VR&PartialRead至上主義、Kess3はECUクローンを作る為のFullReadが出来る事を売りにしており、バカ正直にデータを読みに行きます。

その3でE92M3を取り上げていますが、E90世代という括りで見ると興味深いことに、Kess3は直接データを読みに行き、AUTOTUNERはバーチャルリードでお手軽施工が出来るわけです。


で、ここからが本題なのですが、弊社はかなり特殊なE90系を何台か施工させて頂いております。
②日本仕様325i(330iの3ステージインテーク&130i用リアピースetc)

いずれも既に社外のデータが入っていた為、時間はかかりますが、データを直接吸い出す事が出来るKess3で施工しました。(いずれもECUのロックを解除してくださっていましたが、何だかんだ吸い出しは1~1.5時間ほどかかっています。セクタ単位での読み出ししか出来ない&Seed/Keyチャレンジはマジでクソです。)

①の車は当初330iマップが入っていたのですが、DME品番とプログラムが一致せず吸い出せず、その場で128iカスタムマップにオーナーさん自らDMEデータを変更。吊るしデータを作って貰った後、328iのオリジナルマップベースのデータに変更、更に実走テストでデータ採りをし、バルブリフト量を330iに合わせたデータを作って貰うことで暫定最終版としています。計算上は(ノーマル状態での出力がBMWのカタログ値通り出たと仮定して)290~300馬力くらい出ている事になります。

*330iと328iはDME品番が違う為、実は巷のツール&ソフトの組み合わせで流し込んでいる330i化データってちょっと危険なのでは?(Kess3で読み出しエラーが出たということは、データの整合性が何らかの形で取れていない…ということになります)という話をしていました。
*実際に動いているのであれば全く問題無いと思いますが、書き込み中にECUがBrickしたなど、何らかのトラブルが起きた時に復帰出来ない可能性がある…というのは1bitくらいでいいので、頭の片隅に置いておいても良いかもしれません…。

②の車が今回の記事の本題です。某ショップのツールを購入し、”ツールに付属している機能を使ってマップを330i相当の3ステージインテークが動くものに書き換えてある。”という話でした。
AUTOTUNERで何かトラブルが起きても困るので、Kess3でFullReadすることで全セクター抜き出しを行ったのですが、CelticTuningからの返答は"The file sent was a stock file."という返答でした。つまり、DME上のデータは325iのデータそのものだった。ということです。

僕が抜いたデータがKess3でのFullReadだった。というのは確実だと仮定して議論を進めます。

オーナーさんにも"The file sent was a stock file."というやり取りをその場で共有&技術系の方だったので、原因を検討したところ、
①以前の書き換え時にはエラーは出なかった
②以前の書き換えはそこそこ時間がかかった記憶があるが、Kess3のFullReadほどはかからなかった
③初回書き換え時にパワーが上がった気はする
④CelticTuning施工後、吸気音がするようになった(3ステージインテークが動くと物理的に結構大きな吸気音がします。)

こういった状況から
①実は前の書き換えが上手く行っていなかった(エラーは出なかったが書き換えに失敗していた)
②Kess3が読み出せない領域を弄っていた
③実は某ショップのツール&データは詐欺商品だった
という3パターンの確率がそこそこ高いのでは無いか…という話になりました。

①は割とよくあります。エラーが出ていなくても上手くいかない/エラーが出てても書き込みは成功しているetc、書き換えツールの動作も結構不安定な印象があります。
僕は施工後、必ずオーナーさんに実走チェックをして頂いてからお金を頂くようにしています。基本的にはオーナーさん以上に僕がその車をわかる&上手く踏めることは絶対に有り得ないと思っています。シャシダイがあれば客観的なデータが取れるから話は早いのですが、値段を3倍くらいに上げないといけなくなってしまいます笑

②無くは無いと思いますが、EEPROM領域(イモビ及び学習領域)に3ステージインテークの制御領域がある可能性は割と低い気がします。MSV70というDMEを使っていますが、実質的にはMS45.1なので、EEPROM領域にはこの情報は無いんじゃないかと…(というか、そんな大事な領域なら確実にKess3も読みに行く気が…)

③んーわからん。わからん。

*調べていて気がついたのですが、詐欺とは言わないものの、BMWのDME編集ツールには際どいものが結構あります。Bm3(BootMod3)も正規ライセンスを購入していれば良いと思うのですが、クラック版が本当に多い印象が笑
*ある意味解析され尽くしているのがBMWではありますが、ちゃんとしたチューナーが作ったファイルの方が安心だよね…というのはBMWに限らず…

*”ちゃんとしたチューナー”の定義も凄く難しいですね


という感じで、実際の例とセットで、”書き換えたのに、書き換えてなかった。”というのは事実あるし、その確認って難しいよね。(見たデータって本当に車に入ってたデータなの??)という話でした。

*別件で、個人的な興味から某有名チューニングサービスのデータが入った車(のデータ)を何台か吸い出しさせて頂いたり、挙動を確認させて頂いているのですが、同一モデルでも個体によってデータが違う気がする例も確認しています。
*チューナーが万人受けするデータ/わかっている人にしか出さないデータを作り分けているパターンは事実ありますが、そういう事をする印象が無いサービスだったので首を傾げています。
①商品名とサービス名が実は一致していない(もっと安いデータ屋のデータを買ってきている)
②中古車として流通する過程で、入れたデータのデータ元の名前がすり変わってしまう
③オーナーが無頓着なパターン
など、明確な問題があるパターン/責任の所在が不明なパターンいずれも考えられる為、本当に難しいなぁ…と思って見ています。

0 件のコメント:

コメントを投稿