チューニングのステージを上げたい場合、他社のデータが入っていると要注意だねという話&自社のデータは書き換えられないとされていても、適切なプロセスを経ることで絶対に書き換えが可能というその1
ツールメーカーが作る吊るしデータは存在する&チューナーによって意外とデータは違う&チューニングカーを壊すのはオーナー自身というその2
から続く、その3です
今回はCelticTuningの実際の編集範囲&CelticTuningJapan保有機材の読み出し範囲&編集範囲について書いていきましょう。時間のかかる車、時間のかからない車といった話も編集範囲と密接な関係があります。
今回も、記事を書く際に幾つかの新しい用語を定義付けておきたいと思います。
<前回からのキャリーオーバー>
~ツール~
・Kess3
イタリアAlientech製の最新ツール
*黎明期から何世代も作っており、その集大成とされている
*むちゃくちゃ高性能&アクセスの簡単なサポート窓口があるが、イタリアらしい雑さに失笑することも
*ECUクローンを作れる読み出し領域の広さがあるが、時間がかかる
・AUTOTUNER
ルクセンブルクAUTOTUNER社のツール
*後発の利点を活かし、VRを最大限活用し
*VRデータが多い為、OBD経由で爆速施工可能な車が多い
*データ読み出し領域がどれくらいの領域なのか読み出すまで全くわからない
~手法~
・Bench(ベンチ)
ECUを取り外してピン刺しすること
・Boot(ブート)
ECUを殻割りして抵抗を差し替えたり、ピンを落として接続すること
・VR(バーチャルリード)
データをECUから読み出さず、サーバーからHardWareナンバーとSoftWareナンバーが一致する同一データをダウンロードすること
*ECU内のデータを読み出しているわけでは無いことに注意する必要がある
<今回の導入用語>
~データ読み取り範囲~
・Full Read
ECU内の全バイナリを読み取ること(イモビ領域まで含むことが多い)
・Partial Read
ECU内の一部の領域(主に燃焼領域)を読み取ること
ということで、本題です。
①ECUからデータをFull Readで抜き出す
②データ書き換え
③書き換えたデータを書き込む
であるのは自明です。
ただ、何らかのSGW(セキュリティゲートウェイ)が存在するわけで、そのSGWをどのように回避するか…というのが各ツールの差となっています。読み出し/書き込み共に、純正のECU更新プロトコルがバックドアとして存在していますが、どのようにそこを叩くか…というのは各社大きな差があります。
以前から連呼しているVirtualRead、今回新しく導入したFull Read/Partial Readの概念がコレです。
既に書いてきている通り、最近の車は2018年から運用されているサイバーセキュリティ法によって、OBD経由でECUのデータの読み出しが出来なくなっています。CANインベーダーなどのツールを使用した車両盗難を防ぐ為の設計で、イモビ情報を抜かれないようにしています。
(実際に施工例が増える中で自分も学んだのですが、2015年以降にマイナーチェンジやフルモデルチェンジをした車は基本的にSGWがかなり強固なので、(VRをしたとしても)ECUを外さないと書込みが出来ない例が多い印象を受けています。ジャガーのXEやAudiのS5がこのパターンでした。逆に、8S TTRSやGolf8RなどVW/Audiの横置きエンジンはかなり近々のモデルでもECUを外さずに出来る例もあります。)
また、車のECU周りの通信速度は無くほど遅く、OBD経由でFull Readをするととんでもない時間がかかります。(BenchやBootであれば数分~1時間ほどで読み出しは完了します。)
*汎用ツールを使わない他社データの書き換えはFullReadを扱うことで可能になります。"フルバイナリ"という表現もされますね。EEPROMまで読み取ることになるので、理論上はイモビを触ったりも出来るようになります。
で、面白いのは、AlientechとAUTOTUNERはファイルサイズ(読み出し量)が全然違うという話になってきます。
当然、OBD<Bench<Bootと読み出し可能な領域は増えて行きます。OBD経由でのFullReadが出来る車は結構珍しく、Bench以上は概ねFullReadとなります。EEPROMはEEPROMリーダーで触らないといけない古い設計のECUもまだまだありますが…(国産車にこのパターンが多い)
ファイルサイズについて具体的な例を掲載すると、V8 4LのE9x系M3はSiemens MSS60という双子ECUを使用しており、1つのECUの内部に2つのECUチップが入っています。OBD経由でFullReadをすると、それぞれのチップから5MBずつのデータを抜き出すのですが、片側2.5時間ずつかかる為、読み出し時間はトータル5時間を超えてきます。ECUを外し、殻割りすることで両チップにアクセスしたとしても片側1時間、トータル2時間コースとなり、兎にも角にも大変な作業になってきます。
もし、この車をVRするのであれば、サーバーから該当データをDLするのに5分→書込み30分強という楽さで出来るわけです。ただ、ここに落とし穴があります。
それぞれ5MBずつ…という話を書いていますが、VRするファイルはおよそ1MB…。フルリードの1/5の領域しかありません。この領域について、ツールメーカー&CelticTuningに確認をしたところ、VRしたファイルは燃焼定義領域のみを含んでおり、コールドスタートキャンセルを可能とする領域のデータは含んでいない。という解答が返ってきています。当然、EEPROM領域も含んでいないわけです。
コールドスタートキャンセルの有無を書き換えたい場合、(最も確実な手順を取るのであれば)FullReadが必須となり、キャリブレーションマップを編集する必要があるわけです。
こういった所を逆手に取ってしまえば、コールドスタートキャンセルのオンオフは諦めたうえでパワーアップだけであれば短時間で出来る。ってのも面白いなぁ…という発想なども出来ますね。(問い合わせの多いコールドスタートキャンセルのオンオフはやはりやりたくない…という無言の圧力w)
*この辺りのコーディングの話は非常に奥が深く、巷で色々なコーディングが販売されていますが、コーディング領域の違いによって分類して考える必要があり、コールドスタートキャンセルはECUのキャリブレーションマップを編集する必要があります。逆に、アイドリングストップキャンセルやデイライト有効化はECUのキャリブレーションマップをいじっているわけではなく、メーターやBCM(ボディコントロールモジュール)など各ユニットの「設定フラグ」を書き換えているだけです。ロングコーディングという名称が使われることもありますが、殆どが設定フラグの書き換えとなります。
*編集領域とそのリスクをわからずに触ってる人/店は驚くほど多い印象があります…。
こういったツール毎のアプローチ方法の違いが施工時間&施工可能メニューに影響を与えているんだよ。速いツールは出来る事も少ないけど、それを逆手に取ることも出来るよ。というお話でした。
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