2022年4月12日火曜日

令和のGr.Bカー;Golf 6 Variant TSI comfortline

好き放題踏ませて頂きました。
知ってはいましたが、僕好みの車でした。

先日、遠路はるばる東京から高知にある四国自動車博物館まで行ってきました。20年ほど前に知った夢の博物館ですが、流石に高知は遠く中々訪れる機会がありませんでした。

自他共に認める?ラリー好きなわけですが、FIAT系のラリーカーがこれだけ並ぶと興奮を通り越して感動して何も言えませんでした。

また、個人的に”俺の考えた最強の設計”をされているRS200の実車を見れました。無限にお金があったら欲しいクルマリストトップ3くらいに入ってくる1台です。。

また、悲劇のGr.Bカーその2とも言えるデルタS4もあり、途方に暮れていたのも事実です。あまりに恋い焦がれすぎて実物を見た時の記憶が何も無い…。

このデルタS4はスーパーチャージャーとターボチャージャーを両方搭載した非常に面白いエンジンを搭載しており…という話はこのブログの読者にとっては周知の事実でしょう。スーパーチャージャーのみを搭載した037ラリーではピークパワーが足りなかった為、ターボを増やしたという発想で良いと思います。


この後、1986年WRC第3戦ポルトガルラリーでのRS200の事故、第5戦ツール・ド・コルスにおけるデルタS4の事故でGr.Bは終了し、その後のGr.Aではターボチャージャーのみを搭載したデルタHFインテグラーレが走るわけですね。スピードレンジが上がるにつれ、スーパーチャージャー→ツインチャージャー→ターボチャージャーとシステムが変わっていったことは大変興味深い事実です。

このツインチャージャーですが、デルタS4のものは高回転域でスーパーチャージャーが吸入抵抗となってしまうのが問題だと言われていました。ターボチャージャーの制御技術が上がり、ジオメトリ可変の新しいターボチャージャーが出た為、近年ではロマンの代名詞のようなキーワードになっていますね。


2007年にフォルクスワーゲンがEA111型のエンジンで復活させるまで、ほぼロストテクノロジーとして扱われていたロマンですが、やってくれましたフォルクスワーゲン。俺たちのワーゲンはやっぱりロマンをわかっていらっしゃる笑

しかもフォルクスワーゲンは電磁クラッチでスーパーチャージャーを物理的に切り離すことでランチアが直面した問題を解消しています。デルタS4は1759ccでしたが、フォルクスワーゲンは1389ccと小排気量なのでスーパーチャージャーの物理的な回転抵抗も問題になるのかもしれません。

ということでゴルフ6ヴァリアントの話に入ります。


このエンジン、噂に聞いていたようにスーパーチャージャーとターボチャージャーの切り替えタイミングはわかるものの、大変滑らかに吹け上がっていきます。ターボサウンドよりもスーパーチャージャーサウンドのほうが大きく、Gr.Bカーに乗っている気がしてきます。CAV型として最高出力 160ps(118kW)/5800rpm,最大トルク 24.5kg・m(240N・m)/1500~4500rpmと当時2500ccクラスのパワーが1400ccから出せると謳ったダウンサイジングターボですが、確かにパワーも十分です。その後、フォルクスワーゲンはこのクラスのエンジンを1400cc+ターボのCZD型で最高出力 150ps(110kW)/5000~6000rpm,最大トルク 25.5kg・m(250N・m)/1500~3500rpmに、1500cc+ターボ+気筒休止システムのDPC型で最高出力 150ps(110kW)/5000~6000rpm,最大トルク 25.5kg・m(250N・m)/1500~3500rpmにアップデートしていっています。
事実、滑らかさではこの3エンジンはほぼ同一ともいえます。瞬間的な最高出力はツインチャージャーのCAV型が最も高い160馬力ですが、新しいCZD型とDPC型のほうが最高出力の発生バンドが広くなっていることからもわかるように明らかにパンチがあります。これが技術革新なのね…と思ったのは内緒です。CZD型とDPC型はターボのシューーーンという音が特徴なので、ミャーーーンというスーパーチャージャーの音が好きな人はCAV型という選び方も出来そうです。
このクラスのフォルクスワーゲンは本当に優秀で、よくキッズに「150馬力クラスって遅いよね。」と言われるのですが、210km/hのリミッターが当たるまでスムーズに加速していきます。もちろんパンチのある加速は140km/hくらいまでしかありませんが、滑らかな回転上昇と同じように速度も伸びていくのはストレス無く長距離移動が出来てとても好感触です。燃費も非常に良く、好き放題踏んでいても12km/Lくらいで走っていたようです。


その速度域に合わせて適切なサスペンションセッティングがなされているポイントも評価したい所です。通常のゴルフやポロはリアサスがトレーリングアームになっておりリアサスの接地感(というか接地性能そのもの)が弱点になっています。しかし、ヴァリアントは全グレードマルチリンク(4リンク)になっており、乗ってすぐリアサスが仕事していることに気がつく程の大差があります。ゴルフヴァリアントは通常のゴルフよりもホイールベースが長いのかな?と思っていたのですがゴルフ6においては同じ2575mmであり、この直進安定性の良さはリアサスのメカニカルな構造によるものと言えそうです。話が大きく脱線しますが、サイズ的な意味ではゴルフトゥーランというモデルがこのヴァリアントの上に存在しており、ホイールベースが2785mmとパサートクラスのホイールベースを持っています。リアサスは同じマルチリンクで鬼のような直進安定性を誇ります。以前記事をアップしたF5型アウディS5カブリオレと比較すると流石に負けますが、トゥーランの直進安定性はミニバンとしては異常に良いので後日トゥーランも記事にしておきましょう。ただ、トゥーランは割と簡単にスピンモーションに入ることが出来るのと違い、ヴァリアントは簡単にヨーが立ち上がらないのは車高の低さもありそうです。トゥーランは物凄く安定性が高いのですが、低μ路で適切な入力をしてやると本当に簡単に横向けることが出来るので、そういう意味ではFF系ワーゲンの中ではヴァリアントモデルがトップクラスに安定性が高いとも言えるかもしれません。
しかし、それは曲がりにくいというわけではなく、通常のゴルフとホイールベースが同じことからわかるように非常に気持ちよく曲がります。これ普通に峠でかなりの領域で振り回せる気がします。
この直進安定性の高さはリアサスのメカニカルな構造と長いリアオーバーハングとテールゲート部が生み出す空力の良さに起因していると考えられます。TWRが開発したボルボの850BTCCレースカーでは当時ワゴンボディのほうが高速性能が高かったという話もありましたから、それに近いことが起きているのでしょう。

また、こういったワゴンタイプの車は以前トヨタのカルディナに乗っていたことがあるのですが、カルディナがレーンチェンジの度にボディの捩れが気になるのに対し、ゴルフヴァリアントはあまり気になることはありませんでした。スタッドレスタイヤだった為絶対的なグリップ力が低いというのもあるとは思いますが、最初から最後までボディ剛性に不満を感じることはありませんでした。


不満点を挙げるとすれば…うーん…正直全く思い当たりません。年式相当のヤレは気になり始めるコンディションではありましたが、あれくらいなら許容範囲内なのでは無いでしょうか…。初期型の7速乾式クラッチDSGは確かにヤバかったですが、普段僕が乗っているトゥーランは4万km目前で既に1度クラッチ交換を行っていますし、あまり大きな問題とは言えない気がします。
物凄くアラ探しをするのであれば、ハブベアリングが死にかけるとああいう挙動になるんだなという所であったり、ダンパーは多少抜け気味でした(がピッチングの収束も悪く無く、基本設計の良さを感じました)し、スーパーチャージャーのベアリングがゴトゴトしはじめているような気もしますが、令和の時代にあまり不安無くアシとして使えるドイツ系Gr.Bカーに乗れる。というのは非常に贅沢かつ魅力的ですね。

ランチアだったら県を超える度に壊れますよね。多分。

参考サイト
ネオカリクレスEngineeringの酷いブログ;VOLKSWAGEN GOLF 6 Variant TSI Comfort line

[追記]
物凄く久しぶりに油圧パワステの車に乗りましたが、電動パワステに慣れてしまった今、逆に油圧パワステに違和感を感じたのは驚きでした。
電動パワステらしい。

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