2022年12月28日水曜日

S-TronicやDSGのジャダー問題と制御の話

DQ200の問題が取り沙汰されますが、本質的にはどれもこれも似たような構造です。
*DQ250という最初のDSGのカットモデルです



こういったギアボックスは同軸上に2つのクラッチディスクが用意されており、より大径な奇数段用クラッチと小径な偶数段+バックギア用クラッチが存在しています。DSGはどうやら発進時の負荷が掛かる為、奇数段のクラッチのほうが大きく、1速とバックギアで違うクラッチを使うことで負荷を分散しようとしています。ただ、後述しますが、この設計が根本的な間違いだと僕は思います。乗っているとわかるのですが、バックギアと2速で最も半クラを多様する設計になっているなら、バックギアと偶数段に大きいクラッチディスクを使うような設計にするとか、前進時は奇数ギアでクラッチを揉む設計にすれば良いと思うんですよね…。

様々な国で報告されているように、乾式クラッチを採用したモデルはメーカーが想定しているよりも短期間でクラッチが磨耗し、様々なトラブルが発生します(というか、消耗品の入れ替えスパンが想定よりもかなり短いという言い方が正しいのかもしれません)。
ただ、個人的な観測ですが、通常の発進加速のアクセルの踏み方で大きな差が出るとは思いません。どちらかというと半クラッチ時間を伸ばす曖昧な入力が連続すると大きなダメージが与えられると思って見ています。

個人的に観測、というか我が家のトゥーランの話をすると
・幅が決まったパレットにバックで登りながら入れるタイプの駐車場に入れることがある
→スムーズに一発で入れないと小径クラッチへの負荷が異常にかかる
*現実的にはそんなバチバチな車両感覚がある人は"ほぼ"存在しない為、電動パーキングブレーキのオートホールドを使うことでクラッチ負荷の軽減が可能です。
*また、坂道途中での切り替えしを極力避け、フラットなエリアで方向転換が出来るのであればなるだけフラットなエリアで向きを変えておいたほうが良いです。
・左足ブレーキを使う為、クリープ中にアクセルとブレーキの微細な入力が発生している
→2速で!クラッチを!揉むな!
*渋滞や微妙な前進をしたい時にDSGは1速でクラッチを当てたり、2速でクラッチを当てたりしながら前進します。この際、アクセルもブレーキも踏まないとクラッチを完全に繋いで一定速度で前進しますが、ブレーキを軽く当てたり、アクセルを軽く当てたりするとストール防止でクラッチを電気的に揉んでいるようです。DSGのプログラムを観察していると、1速で半クラッチを使えば良いのに2速で半クラッチを使うような仕様になっているようです。1速は発進のみの転がし用のギアになっていますが、多少燃費が悪かろうが、ギクシャクしようが、転がし用のギアでクリープさせれば良いのに…と思って見ています。これは燃費テストの手法や表面的なカンファタブルさを求めた設定になっているのが問題な気がします。
*最近は安全の為、ブレーキとアクセルを同時に入力した時はブレーキオーバーライドによりスロットルが自動的に閉じられるようなプログラムが組まれています。ただ、このプログラムはブレーキペダルが15%ほど踏まれていないと作動しないように感じています。低速で微妙にブレーキペダルへ入力がある状況ではクラッチが迷いまくります。
 *明らかに乾式クラッチ車のほうがESPを活用したエンジン制御が弱いです。また別記事で触れますが、DQ500を採用しているTTRSという特殊な車を比較対象にした時、トルクリミッターの制御を見るとトゥーランのほうがガバガバです。世代が理由なのか仕様なのかはわかりませんが、もっと積極介入するような設計にしても良いと思います。
*個人的には、今のVWグループの車(ワーゲン、アウディ、ポルシェ、ベントレー全て)は 左足ブレーキを想定していないプログラムになっていると感じています。アクセルを踏んでいない時もミスファイアリングシステムでブースト圧をコントロールしており、特定の条件下の特定の曲率になっているコーナーではメリットがあるような気がしますが、駆動系への負荷を考えると唸る所です。

このように、車両感覚が優秀で、自動車が伝えてくる細かいフィーリングを読み取って操作に反映出来る開発ドライバーや外部のテストドライバーでは再現出来ない一般ドライバーの操作が原因でトラブルが起きているようです。端的に誤解を恐れず書くのであれば、クラッチペダル上に足を載せたまま運転してMT車のクラッチを1万kmくらいでズタズタにしてくるような状況が多々発生しているわけです。運転が下手すぎてメーカー環境ではテスト出来ないでしょコレ…。
とはいえ、構造的にシングルクラッチモデルよりも各クラッチ板の面積も小さく、結果的にライフが短くなることは自明なので、交差点よりもラウンドアバウトのほうが多い欧州や右折で信号に左右されないアメリカのど田舎ならまだしも、発進加速が連続する市街地では中々厳しいシステムだと思います。湿式クラッチモデルはギアオイルがクラッチ板の潤滑と冷却を同時にやってくれ、DSGオイルクーラーまでついているので何とか出来るようです。

そんなこんなで、MT車を運転するように運転しないといけないというのがDSGへの結論で、僕は最近マニュアルモードでクラッチレスマニュアル車のように乗っています。適切なギアを選択せずクラッチを揉む制御に違和感を感じ、クラッチを揉むなら是非ともこちらの指定するギアで揉んで頂きたいという遺憾の意をVW大本営に表明しております。
この乗り方をすると、クラッチジャダーが出かけている車なら何となく誤魔化すことが出来、特殊なMT車()に乗り慣れている人であれば軽いジャダー程度なら消せます。それでも消せないジャダーが出たらクラッチ交換をしないといけないわけですが、ジャダーも2種類存在するようです。

クリープ中の1速据え切りなどパワーが足りない時に出るジャダー(というかノッキング)→点火不良の可能性が高くプラグ交換で改善
登り坂などアクセルを踏んだ状態でパワーがかかった時に出るジャダー→クラッチの異常摩耗

個人的に、この2つのジャダーは明らかに違うタイプのジャダーであり、ジャダーという単語で一括りにされていますが、ノッキングを消すためにクラッチを揉んで結果的にジャダーが発生しているパターンと、クラッチが本気でキャパってイッてしまっているパターンがある気がします。言語化することも、理解して貰うことも、対処方法を実行することも全てそこに”バカの壁”があるよな…と、対応しないといけないディーラーの人やショップの人には頭が上がりません。
ノッキング由来のジャダーはワコーズのフューエルワンやそれに準ずるPEA配合の燃料添加剤を入れて高速で踏み散らかすと多少改善されますが、やっぱりプラグ交換に勝る対処はありません。下のリンクにあるAZの燃料添加剤、初回のみフューエルワンの1/8くらいの値段で買えるので、怪しいジャダーが出ている人は一度入れてみても良いかもしれませんね(ハイパーダイレクトマーケティング)


我が家のトゥーランはディーラーにてDSGクラッチ交換をして貰っていますが、一週間くらいかかるかと思っていたら中1日で返却されています。リペアキットというのが常備されているそうで、如何にDSGクラッチ交換が多く、ディーラーが慣れているか…というのがわかりますね。




参考までに、海外サイトに落ちていた許容トルク一覧表を貼っておきます。前述したように別記事で書きますが、ECUチューンとS-Tronic/DSGの制御プログラムを一緒に書き換えて許容トルクを超えるようなチューニングが巷に沢山ありますが、どう考えてもヤバいです。純正プログラムに何故トルクリミッターが入っているのか…ハイパワーモデルは何故未だにトルコンATを使っているのか…という現実をしっかりと見た方が良いと思います。

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