2022年12月20日火曜日

TT RSもしくはアウディのRSモデルを買おうかどうか悩んでいる人に読んで欲しい記事;Driving the 2018 Audi TT RS With the Man Who Created It

 以前にもチラッと紹介したシュテファン・ライル(Stephan Reil)による"TT RSとは"論です。
先日アップロードした8Jのスノータイヤを履いてのインプレッションです。

個人的にシュテファン・ライルがquattro/Audi Sport GmbHの開発責任者だった2001年〜2017年のモデルと、それ以降のモデルは毛色がちょっと違うと思っています。具体的にはTTRS(8S/FV)、RS6(C7まで)、RS4(B8まで)という一世代前のRSです。この世代のRSモデルは腕に自信がある人向けのかなり尖った仕様になっているように感じるのですが、この次世代(現行C8 RS6、B9 RS4など)から機械を機械として正しく動かさなくても電子制御で全て解決してくれるセッティングになっています。良く言えば万人受けする乗り味に、悪く言えば下手くそでもとりあえずアクセル踏んでブレーキ蹴っ飛ばしてハンドル切ったら乗れる仕様になっています。
某友人はシュテファン・ライルの後任であるオリバー・ホフマン(Oliver Hoffmann)が下手なのでは説を唱えていましたが、個人的にはAudi SportsによるRSモデルの生産数増量の為、万人が乗れるハイパワーモデルを開発したかったのでは無いかと思っています。
シュテファン・ライル時代のモデルを見ると、同世代のMやAMGと比べると絶対的なパワーや加速スペックでは劣るものの、ニュルブルクリンクのラップタイム(fastestlapsのデータ参照)では10~20秒ほど速いという面白いデータもあります。下にあるように、サウンドチューニング以外はほぼ全ての走行をニュルブルクリンクで行っているという記述もあり、RSモデルがニュルスペシャルとして作られていることも伝わってきます。他のシュテファン・ライルのインタビュー記事を読むと、RSモデルは一貫して”タイヤキャパシティに合わせた車造り”を提唱しており、闇雲にパワーだけを追い求めていません。(ソースを見失ったので見つけたらここに追記しておきます。)

5気筒エンジンについても面白いコメントを残しています。4気筒ターボをカリカリにチューンすることは出来る。でも、低回転域のトルクは多くなるけど回しても全然楽しく無い。5気筒だったらもっと原始的で力強さがある。社内で検討したけど、車好きばかり居るから5気筒が速攻で採用された。と言っています。

更に、シュテファン・ライル本人がプライベートでTT RSに乗っているとも書いてあります。

彼のオススメは電子制御ダンパーの無いモデルのようで、マグネティックライドのスポーツ/コンフォートの中間域の特性にセッティングされているようです。この仕様は日本では購入出来ないのが残念ですが、続くコメントはサスペンションセッティングの最も重要なポイントを完全に理解していることがわかります。(謎の上から目線での引用)

また、ちょっと話がズレますが、個人的にあまりに変化率が大きすぎると感じたバリアブルレシオのステアリングに違和感を感じるというコメントがこの記者から出ているのは驚きです。14.0:1から12.0:1にいきなり変わる瞬間があり、かなり違和感があるので僕はスポーツ固定で乗っていますが、ダンピング特性やエンジンマネジメントにもステアリングが影響を受けるようで最終的にはダイナミックモード固定にしないと違和感を感じます。

そして、最後に僕が最も納得し同意出来るフレーズを紹介しておきます。TT RSのraison d'etre(レーゾンデートル;存在意義,理由)を聞かれた時の返答です。
"軽く、パワフルで控えめなこと。スーパースポーツカーは「見て見て!」という乗り物だけど、TTRSは同じ領域で遊べるオモチャなのに、コンパクトだから目立たない。(過小評価される。)サーキットでは信じられないくらい速い。ニュルブルクリンクではプロドライバーが乗ればR8 V10 Plusのほうが15秒/周速いけど(auto buid誌のデータでしょうか)、素人(それなりに乗れるドライバー)が乗るとパフォーマンスを発揮しやすいTT RSのほうがR8よりもラップタイムは良くなる。"
これは、ハルデックス(直結)4WDシステムがもたらす解りやすい操作感の事を言っていると思います。恥ずかしながら、先日書いた記事(アクセル全開が四駆の基本だ!;慣らし終わったAudi TT RS Mk3 (FV/8S))を書いたときはこの記事を知らなかったのですが、正に僕が感じたことを開発責任者のシュテファン・ライルが言っていました。ハルデックスの話をグダグダと僕は書きましたが、一言で簡潔に言い表されていて脱帽です。
この記事は歴史に残る名記事だと思い、紹介させて貰いました。


喋る可愛いシュテファン・ライルおじさんの動画を再度貼っておきます。後任の人よりも英語が上手いからなのか、メディア露出が多い印象があります。

3 件のコメント:

  1. 本当に面白い記事でした。個人的には、「そりゃでかいエンジンにでかいブレーキつけりゃ最高速とかラップタイムは良くなるけど、クルマの味は違うところにあるよね(超意訳)」というところも好きです。

    ちょっと違うかな?と思ったのは、原文だと「4気筒エンジンのほうが低速トルクが出せるけどそんなのは回しても面白くないやん?」という趣旨のように思えるのですが、いかが?

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    1. あー、これそういう意味?どっちに取って良いかわからんかった

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    2. 「4気筒だと2気筒ずつまとめて回すことで排気干渉のないツインスクロールターボになって、5気筒で排気干渉のあるシングルターボに比べて、低回転からタービンが回せて下からトルクが立ち上がるけれど楽しくないよね」って説明を僕なら入れますけど、入ってないからわかりにくいですよね

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