2024年3月2日土曜日

BMW Z4 sDrive20i Msport(Z29)

 そのうち理由は書きますが、1ヶ月ほど借りて乗る機会があったので…
セレクトパッケージ付き、ファスト・トラック・パッケージ無しというモデルでした
7969000円の価値はあるのでしょうか?

セレクトパッケージ

ファスト・トラック・パッケージ

結論から書くと、ファストトラックパッケージは必須なのかもしれません。255/35ZR19 96Y XL&275/35ZR19 100Y XLのミシュラン・パイロットスーパースポーツとMスポ脚の相性はステージを選びます。
この脚だと90~170くらいの領域でハチャメチャにボインボインする感じになり、無限シェイク車酔い編が開幕することになります。中央道を気持ちよく走ろうとするととにかく上下にシェイクされる感じ…そこから更に踏んでいけばどうにか落ち着くポイントは見えてくるのですが、このパワー(197PS/4500rpm&320Nm/1450-4200rpm)でその速度域は燃費がマジで悪いので非現実的です。上限90くらいで首都高を流していると収まりが良いので、完全にお買い物車としてセットアップされているように感じます。ただ、ボインボインしながらもメカニカルグリップは高いので意外と走れます。スポーツ+に入れてリアブレーキをつまませると結構気持ちよく走り、普通の使い方であればそんなに不満は出ないと思います。バネ下が重い+ダンパーが安い+そもそものモノコック剛性が低いという3重苦なので、実際に自分で800万出すのであればちょっと足してS5クーペ/カブリオレを買った方が良いと思います。0-100も5秒フラットくらいで圧倒的に速いし。(Z4 20iは7秒弱)ただ、現行の新車で買える車だとこのジャンルの車ってSLKとTTロードスターが消えた今、Z4一択なんですよね。BMWの強さを感じます。そして、明らかにトヨタから情報提供を受けた空力処理は非常に優秀です。風切り音が全くしない。
*中古だと前期型が400万強…スペシャリティカーとしては確かに手頃な価格ですよね。
*ただ全然開発費足りとらんやろ…(セッティングが甘い)というのは誰もが感じると思います。走行テストにかかってる金額が安すぎる。煮詰まってなさすぎる。とにかくコストがかかっていない。

細かいところを見ていくと、Audi TTの表面的なダメなところを徹底的に潰していることがわかります。インテリアの使いにくさ、鼻先の重さ、ロードスターの電動ソフトトップのダメさetc手が触れるところの質感がかなり高くなっているのが特徴です。個人的にはアウディTTはドライバー受けはするものの一般受けしにくい車だと思っているので、Z4は2シータースポーツカーとしては圧倒的に家庭内稟議が通りやすいラインを絶妙に突いてきている印象を受けています。こうなるとSLK55も今更ですが乗ってみたいな…とか色々考えてしまいますが、この辺りの車はPWRが悪くボディ剛性も足りないのでTT一択な気がしているこの頃です。

また、ここからは雰囲気の話になるのですが、この車を乗り込んでいくと”BMWの自動車作りにおける軽快感や彼らの考えるBMWらしい挙動”というのが何かわかるような気がします。スポーツプラスという最もスポーツ度の高いモードにし、きっちりフロント荷重をかけてちょっとだけ早めのペースでコーナーに入っていくシチュエーションでアクセルを踏むとリアのイン側ブレーキをしっかりつまみ、トルクをリアタイヤに分配していき、何となくオーバーステアっぽい感覚を生み出しています。
*僕はフロントが重い車を好む傾向にありますが、実際のところ実家の車は必ず1台はFRでしたし、FRが全く乗れないというわけでもありません。ただ、FRの車&前後重量配分が良好(50:50)な車はアクセルもブレーキも踏まない状態で待つ瞬間に対する不安感が好きになれず、そこそこのペースで走ることは出来ますが最後までは行けない車だと思っています。
*このZ4は前軸740kg後軸750kgとなっており、ドライバー乗車時にほぼ50:50になるようです

この”なんとなくオーバーステアっぽいグイグイ曲がっていく感覚”は本来ドライバーが作っていくものであり、現実的には非常に難しい操作なのですが、これを電子制御で演出しているというのがこの車の最も評価されるべきポイントだと今回は感じています。そしてBMWイズムはこの動きなのだろう…と思うわけです。
つまり、BMWが定義している軽快に走る感覚というのは”巻き込むように曲がっていく”動きだというのが何となく読めてきます。この動きは僕の好みとは正反対で、僕は曲がらない車を曲げていくのが公道においては正しいと思っています。全てを放棄した瞬間に真っ直ぐ走る車と、左右どちらかに巻き込んでいく車、どちらがミスに寛容で乗りやすいか…というのは必ず確認しておくべきポイントだと思います。必要以上にアクセルを踏み込むことで楽しめる楽しさというのも個人的には全く評価していません。わかっている人間が乗るのであれば問題無いと思いますが、わかっていない人間が乗るとやばい典型例です。
ここまで書いておいて面白いなぁと思ったのが、スポーツプラスに入れるとアクセルの踏み込みが足りない領域において電子スロットルの調整によって微妙にアクセル開度を大きく取りつつブレーキをつまみ、思っているよりも曲がっていく感じを演出しています。この制御のせいで事故る人も一定数居るのではないでしょうか。ECOPROやCOMFORTで同じ操舵量同じスロットルペダル操作量だと笑うほど典型的なアンダー傾向を示すので、本当によく出来ていると感じます。
*275/35ZR19 100Y XLというリアタイヤですら320Nm/1450-4200rpmというトルクでは容易にホイルスピンを起こします。正直なところ、こんなに簡単にトラクションが抜けるか?というのが率直な感想ではありますが、電子制御込みで絶妙なバランスにセッティングされているのは事実です。


TTがイメージとは違ってガチで踏んでいけるガチ一歩手前スポーツカーだとすれば、Z4は古典的なFRスポーツカーっぽさを前面に押し出してきているわけです。ここまでコストかけず雰囲気重視の車を作ってきているというのは素直に面白いですね。

0 件のコメント:

コメントを投稿