2026年5月17日日曜日

ハルデックスチューニングの話

こう、また各方面から怒られる気がしていますが…
APRからむちゃくちゃ面白い商品が出まして…
ハルデックスチューニングのあれこれを書いておきましょう。

ハルデックスシステムのトルク配分云々の話は以前から執拗に書いているので、ここでは書かず、Gen5限定でハック出来るようになったという話を書いていきます。


ハルデックスのGen1時代はアメリカのHPAがハルデックスコントローラーを出しており、その挙動(ロックアップ率)をプログラムすることが出来ていました。HPAの商品は割と面白い商品で、ハルデックス最大のネガである”ブレーキング時にFFになってしまう”事を潰した商品であり、またすぐにハルデックスカップリングを放してしまう制御を強制的にカップリングの圧着をさせる方向に上書きするようなハルデックスシステム用簡易フルコンでした。
ただ、この商品を設計したエンジニアが退職しており、その後の開発が出来なくなったという記述が海外フォーラムで確認出来ます。

Gen2になるとVAN DER VEER ENGINEERINGから携帯のBluetoothに繋ぎ、アプリ管理が出来るようになるものが出ました
この商品はむちゃくちゃ面白く、トルク配分ではなくハルデックスカップリングのロック率を指定出来るようになっています。

で、何故かGen3用のコントローラーは無さそうで


Gen4からはHaldex本家からレーススペックのコントローラーが出たり、上記のVDVE製のコントローラーを使えたり、本家も本気を出してきた感があります笑(Gen1時代から本家のレーススペックコントローラーがあった説もあるんですが、今となっては謎だらけ…)

Gen5はVDVE製のコントローラー、Haldex本家のレースコントローラーに加え、Syvecsがハルデックス用フルコンを出してきており、割と選択肢が豊富にあるのが特徴です。
*Syvecs製のフルコンはIROZ MOTORSPORTとの共同開発であり、フルコンのセッティングだけでなく、プレッシャースプリングの交換も必要になっています。

で、2025年頃、Gen5(MQB用)のHALDEX FLASHというチューニングソフトウェアが出ました。このソフトウェアは画期的で、ECUやTCUでリプロをするノリでハルデックスの制御を書き換えることが出来るシステムです。ポンプデューティが60%を超えなければ強化スプリングは不要(それを超えるなら強化スプリングは必要)という辺りも、割とガッツリハックしたんだなぁ…という印象を受ける商品です。
ただ、この商品は開発元は”理解っている”ものの、取り扱うショップ/代理店が"理解っていない"ところが多く、ニヤニヤしながら見ていました。
前後トルク配分wwww

で、このチューニング、汎用機にも来そうだなぁ…という感じで眺めていたのですが、VW/Audiチューニングの最大手?APRからも販売がスタートしました。
APRはDSC sportのサスペンションコンピューター自社からも出しているように、結構積極的に色々な解析屋さんと組んでいるイメージがあります。エキゾーストもミルテック製だった時期があった(今も?)記憶が。
*このサスペンションコンピューター、僕の周りだと300~500回ほど書き換えるとメモリが死ぬという話を聞いています(あまりに特殊例すぎてwww)
*サスペンションオタクの人が弄り倒したら、最終的にノーマルデータが出来たという笑い話も聞いています


で、今回の話に戻し、ハルデックスチューニングが出たよ…というところです。

流石APR、わかりやすい説明書まで出ており…

バネ組み込み済のバルブ+ドラシャ用ボルトのセットもあります。

サイベックスがバネ単体しか出してない…のと比べると
ここまでパッケージ化しているのは凄いなぁ…という話でした。

で、更に凄いのが、APRはハルデックスシステムを100%理解している記事を出してきており、この内容が本当に凄いのでここに転載しておきます。トルク配分云々を一切書いて居ないのは大変優秀です。

“When you accelerate aggressively, the vehicle’s weight transfers rearward, and that means that the rear tires gain traction from the additional weight while the front tires lose grip because they’re becoming unloaded. And when that happens, the system will attempt to deliver that power through the rear, but it’s ultimately at the mercy of what the Haldex clutch system can pass through. And with open differentials at both the front and rear of the car, once one tire loses grip, the other tire on that axle is also limited to the same amount of power that the grip-limited tire can handle.

For example, if you can normally put 100 lb-ft of torque to each wheel, and one of them is losing traction and can only handle 10 lb-ft of torque because of wheelspin, the other tire on that axle that does have grip will also be limited to 10 lb-ft of torque anyway. Whoever the weaker player determines what the whole axle does. So now instead of having 200 lb-ft of torque at that axle, you only have 20. That other 180 lb-ft of torque is going to try to go to the rear, and if the Haldex doesn’t have enough clamping pressure to handle that much torque, it’s just going to give up. But with our upgrades, the power which would have otherwise been lost will actually make it to the road.”

Geminiに和訳させると…
「激しく加速すると、車両の荷重は後方に移動(ウエイトトランスファー)します。つまり、後ろのタイヤは荷重が増えることでトラクション(接地力)が上がりますが、前のタイヤは荷重が抜けて軽くなるため、グリップを失いやすくなります。このとき、システムはパワーを後輪に伝えようとしますが、最終的にはハルデックスクラッチシステムがどれだけのトルクを伝達できるか(キャパシティ)に左右されてしまいます。さらに、前後ともオープンディファレンシャル(差動制限のない通常のデフ)であるため、左右どちらか片方のタイヤがグリップを失うと、そのアクスル(車軸)のもう片方のタイヤも、グリップを失った側のタイヤが耐えられるのと同じレベルの低いパワーに制限されてしまいます」

「例えば、通常なら左右それぞれの車輪に100 lb-ft(約135 Nm)のトルクをかけられるとします。しかし、片方のタイヤがホイールスピンを起こして10 lb-ftのトルクしか耐えられない状態になると、グリップが残っている側のタイヤも、同様に10 lb-ftのトルクに制限されてしまうのです。最も弱い部分が、その車軸全体の限界を決めてしまいます。これでは、その車軸全体で200 lb-ftのトルクを出せるはずが、わずか20 lb-ftしか路面に伝わりません。残りの180 lb-ftのトルクはリヤに伝わろうとしますが、もしハルデックスクラッチの圧着力が足りなければ、システムはトルクを支えきれずに諦めてしまいます。しかし、私たちのアップグレードを施せば、本来なら失われていたはずのパワーを、しっかりと路面に伝えることができるようになります」


あまり日本では話題になっていなかったのですが、ハルデックスシステム&ノーマルのオープンデフの構造を100%理解しており、それが言語化されている凄さ…というのは本当に凄いことです。

公道走行時、ハルデックスシステムの強さは前後回転同調&オープンデフから来る鬼の直進安定性と定義していますが、そこを上書きしていくこのソフトウェアチューニング、正しく”チューニング”感があり、久しぶりにワクワクするトピックです。

*Gen5ハルデックスシステムはメーカーの口上的にはクラッチの圧着力が足りているはずなのですが、チューニングによって500Nm以上のトルクを発生させるパターンにおいて、かなり効果がある…というのが本質のようです。

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