2023年10月22日日曜日

L663 Defender SVX/SVRについて考えてつつAJ133sの情報をちょっと調べてみた

 大体モデル末期の売り切りに日本市場を使いますからね…ハハ

V8ディフェンダーの納車待ちの間に(というか注文前に)既にJLRの5.0L Supercharged V8(AJ133)はBMWの4.4L Twinturbo V8(N63B44T3/N63TU3)へのリプレースが進みつつあります。

2001年〜2005年にレンジローバーが使っていたN62がゴミだったという話はさておき、このリプレースは望ましいものなのでしょうか?という話、調べていくと結構小難しい話に当たってきます。


ディフェンダーV8が搭載するAJ133は2009年にジャガーのスポーツモデルに搭載される形で登場しました。ボア×ストローク92.5mm×93mmで4999ccの直噴+インタークーラー付きイートン製スーパーチャージャー(Eaton M112)というオーソドックスな構成です。圧縮比は9.5と言われています。当然可変カムもついていますし、オールアルミであったり、タイミングチェーンであったりとよくある構成のエンジンです。

報告のあるトラブルとして、
・2009年モデルではタイミングチェーンが伸びまくる個体があったこと
・スーパーチャージャーの軸受けが壊れる
・ほぼ報告が無いがバルブシートが脱落する事がある
・直噴特有のカーボン固着がある
・ヒートエクスチェンジャーやバーストパイプ周りが弱い
というのがあるようですが、昔のローバーエンジンと比べるととんでも無く信頼性の高いエンジンに仕上がっています(苦笑)

出力データは525ps/6500rpm 625Nm/2500~3500rpm、575馬力のSVRだと575ps/6500rpm 700Nm/3500~5000rpm、600馬力仕様は更に微妙な数字の600ps/6,500rpm 700Nm/5,000rpmとなります。トルクリミッター外してるだけですよねコレ…。

フォード英国撤退後、わざわざ製造工場を新製してまで自社生産しているAJ133ですが、Euro5に合わせて設計されたエンジンであり、当初2025年から導入される予定だったEuro7への対応が出来ないことからBMWのN63へのリプレースが進んでいます。ただ、Euro7そのものが2030年前後へ先送りになったことから、すぐに全てがN63へリプレースされるわけでは無いようです。先日発表されたレンジローバーとレンジローバースポーツは既にN63が搭載されているので、現行モデルとしては既に最終モデルがアナウンスされているFタイプ、F-Pace SVR、Defender V8の3車種が残っているだけ(のはず)です。ジャガーはEVメーカーになるという話になっているので、実質的にはDefender V8専用エンジンとしていつまで生き残るか…という感じになりつつありますね。最後の英国製V8だから!って喜んで大英図書館に音源データを保存しておく場合じゃないだろ…と思います笑
ScienceMuseumにエンジンそのものを入れるべきですね。


と、ふざけた事を言いつつ、AJ133がなぜ置き換えられていくか…という所に話を戻していきます。450馬力〜600馬力&580Nm〜700Nmまでがターゲットゾーンとなっているエンジンですが、実はこのエンジンは600馬力が限界であり、これ以上の出力向上が見込めないようです。割とこれは大きな問題になっているようで、AJ133向けのECU書き換えサービスも無かったり、プーリー交換してかなり追い込んだセッティングを出しても650馬力800Nmくらいまでしか行かないようです。ここまでやると0-100も4秒フラット(ノーマルだと90が5.2秒、110が5.4秒)まで行くようです。要る???





Eaton M112というスーパーチャージャーはコブラやF-150までも実績があり、1.8Lの容量を持つ大型のスーパーチャージャーです。かなり回転抵抗が小さく、60馬力くらいしか食わないのかな?NA仕様のAJ133は385馬力出るのでざっくり200馬力くらいをこのスーパーチャージャーで発生している計算になりますね。(525-385+60=200)



一方、N63B44は簡単に630馬力トルク700Nm以上を叩き出し、AJ133比で2割ほど燃料消費量が少なくなっています。オイル量もAJ133が7L少々使うのに比べ、N63は8L入るようなので実質的なオイル保ちも良いのかもしれません。とはいえ、設計耐久距離が35万kmのAJ133と比べ、25万kmのN63は耐久性が低いことに加え、ウィークポイントが数多くあることも知られています。

N63は
・バルブ周りの密閉性が悪い事によるオイル食い
・シリンダーのネジが弱いためヘッドが浮く
・長期間エンジンをかけないとインジェクターのオーバーフローでウォーターハンマー現象が起きる
・タービンへのオイル供給ラインが弱く、オイルが漏れてタービンが壊れる
・可変バルブシステム(dual-VANOS&Valvetronic)が壊れまくる
というBMW定番故障ポイントを全て網羅している可愛いエンジンです…。

ただ、AJ133では厳しい617 hp/5,600-6,700 rpm 750 Nm/1,800-5,800 rpmという出力をN63はサラッと出してくる+燃費が2割マシという所は悪く無いのかもしれません。N63が搭載可能ということはS63も搭載可能…という考えも出来、海外では盛り上がっているようですが、意外とMのエンジンは他社に単体供給しないのでS63は流石に搭載されることは無さそうです。N63はECUチューンにより680馬力 850 Nmまで上がるので、絶対的な速さを考えると間違いなくN63のほうが良さそうですね。(S63も同じパワーまでしか上がらないようです)
AJ133sの600馬力仕様は600ps/6,500rpm 700Nm/5,000rpmだったので、この差は結構大きいと思います。ブーストがかかっている状態だと絶対にN63の方がドライバビリティが高いはずです。

ドライバビリティに関して問題となってくるのはノンブースト領域なのですが、4999cc+圧縮比9.5と4395cc+圧縮比10.5だと雰囲気的に4999ccのエンジンの方が良さそうに思うのですが、どうなのでしょうか。

こうデータを並べて行くと意外とN63も悪くないな…と思うのですが、やはり排気量の正義は絶対的なようで、AJ133sからN63へ乗り換えたレンジローバーオーナーからはAJ133sの方がトルクの出方が良かったというフィードバックが多いようです。


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