2025年11月17日月曜日

F型&G型など2020年以降のBMWのECUチューニングの解説 by CelticTuningJapan

いつものことですが、日本語で解説されているサイトが全然無いので書いていきましょう。
いわゆるFEMTO unlock(フェムトアンロック)の話です。

以前はOBD → ECU直アクセスが許されていましたが、 OBD → Gateway Control Module(GWM / SGM / CGMなど名称色々) →<許可された通信のみ>→ ECUという流れを経ないとアクセスが出来ないようになっているこの頃…。むちゃくちゃ時間をかければアクセスが出来た時代もあったわけですが、基本的にはOBD経由ではECUにアクセスが出来なくなっています。

そういった車の書き換えに使う方法が、ハードウェアナンバー&ソフトウェアナンバーに応じた元データをダウンロードしてきて使うバーチャルリードという概念です。

ただ、最近の車はこのバーチャルリードしたファイルを書き込む事が出来なくなっており、各社様々なセキュリティシステムを導入しています。わかりやすいのがメルセデスで、cpc(Central Powertrain Controller)というコンピューターにシステム監視をさせています。cpcとECUのデータに齟齬が起きると、リミッターがかかるばかりか、OTA(ソフトウェア更新管理システム)を利用してノーマルデータへの書き戻しを行います。同様のシステムは他社でも採用されており、有名なところだと最近のボルボがチューニング出来ない理由でもあります。

BMW(やVW/Audi)はまた微妙に違うアプローチを取っており、アクセスの為のコードをかなり複雑にしているようです。BMWは後述しますが(というか、これが今回のメインネタ)、VW/Audiはそろそろ解析完了しそう…という話があります。

FEMTOは様々な噂がある会社で、元々はロシアにあったようです。そこからフィンランドに移り、BMWのECUのアンロックを専門にやっているようです。

様々な噂は面白く、中には物理的にBoschからアンロックコードを持ち出し、捕まらないロシアでビジネスをやっていたが、ウクライナとの戦争でECUの受取/発送ができなくなったため、EU圏にはあるがEUには加盟していないフィンランドでアンロックビジネスをやっている…というものも笑

実際には、ほぼ総当たりのような状態で暗号鍵を見つけたと思うのですが(思いたいですが)、ほぼ同様のシステムを採用しているVW/Audiは未だ解析が終わっていない…(先週くらいから徐々に解析完了した!という話が流れてきています。あと数カ月でゴルフ8世代のECU/TCU共に施工が出来るようになるはずではないかと…)というのはちょっと引っかかりますね…(噂って往々にして本当だというのを数多く見てきた…というのもあります笑)

と、そんなこんなで、寄り道をしながら、①今のBMWのECUにロックがかかっていること②各社独自のセキュリティをかけていることはまず理解して頂けたかと思います。

ここから、BMWのECUについて細かく情報を纏めていきますが、概ねこちらの記事;Tuning and Unlocking Post 2020 BMWs – A Complete Guideの和訳が続きます。

BMWのECUについてのロック/アンロックはまず、ECUの製造年月です。これは車両の製造年月や登録年月とは一致していません。ただ、車の生産時期よりECUが新しい事はあり得ません。(e.g. 2020年6月より前に車体が製造されていれば、ECUが2020年6月以降製造のものになることはありません。)
登録日が2020年9月より前(少なくとも英国市場の経験則では)であれば、2020年6月以降製造のECUが載っている可能性は非常に低いです。理由は単純で、車が製造されてから登録されるまでには輸送・販売店への納車・登録手続きが必要で、通常数か月かかるためです。

もし製造/登録が2020年後半〜2021年前半であれば、状況は混在しています。ECUラベルを自分で確認する必要があります。2021年後半以降の製造車であれば、6月2020年以前製造のECUが載っている可能性はどんどん低くなっていきます。


ECUが2020年6月より前に製造されたものであれば、手順は比較的シンプルです。チューニング前にBenchアンロックが必要になる場合はありますが、それでも比較的容易な工程です。(注:ECUを必ず取り外す必要があります。結構な台数、弊社でも施工済です。)
一方、2020年6月以降に製造されたECUの場合は、FEMTO unlock(追記; 現在はそれ以外にもアンロック方法があります)が必要になるか、ECUチューニング以外の選択肢(つまりはサブコンの導入)を検討する必要があります。

*S55エンジン以外は割と簡単にECUにアクセス出来ますが、S55エンジンはインレット?インマニ?を外す必要があるようです。

~和訳終わり~


FEMTOアンロックは何をやってる?という話ですが、送られてきたECUをこじ開け、bootモードで編集可能なデータを書き込んでいるのではないか…と思います。(AUTOTUNERが同様のアンロックを出来るようになっていますが、どうやらそういったプロセスを辿っている気がしています)
*先週、FEMTOから公式にアナウンスがあり、ECUをこじ開けることなくアンロックが出来るようになったとされています。それに伴い、ハンドリングコストが下がったため、アンロック料金も下がっています。
*ほぼ同時に?AUTOTUNERやECMtunerもECUをこじ開けること無くアンロックが出来るようになったアナウンスがありました。
*AUTOTUNERはリモートアンロックという言い方をしているので、FEMTOから何らかの技術提供があったのではないか…と思っています。
*面白いことに、DHLで送れ!と言われているのですが、ロストバゲージ率0.01%未満!という数字が出ています。これ、何処かで見た理屈です笑

ちなみに、同様のアンロックが出来るチューナー(というか、もはや解析屋)はアメリカ/ルクセンブルクに居ることは確認していますが、市場価格が下がりすぎたとして、アメリカのKies Motorsportsは辞める宣言を出しています。

こういった話をする際に物凄く難しいのが、Benchアンロック/Femtoアンロックに限らず、ECUをアンロックするとディーラーの診断器に一切繋げなくなる(繋いだら基本的には強制的にノーマルへ下記戻される&保証が完全に切れる)ため、不退転の決意が必要です。


同様の決意は一部の北米系のチューナーによるチューニング(最早ECU内の階層を書き換えてしまうようなものもあったり)や、バージョン違いのソフトウェアを流し込むようなツール(つまりはAUTOTUNERですが)を使う時に必要です。この覚悟が必要かどうか…というのは、本当によく考えた方が良いです。
バブリングやアフターファイヤーによって触媒がダメージを受けるという話もこの延長線上にありますが、やはりチューニングは等価交換です。何かを差し出す代わりに、爆発的なパワーを手に入れる事が出来るわけです。


弊社はメインの業務が多種多様なジャンルにおけるコンサルティングであり、クライアントに取って最良と思われる方法を提示することが責務です。こういったスタンスでやっているため毎月カツカツで回っていますが、チューニングも同じだと考えています。しっかりとお話をさせて頂いた上で、最適な手段を提案させて頂きたいと思っています。

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